夕方思いつきで行く所じゃない









いちごの里・道の駅よしみ。多くの場合がそうであるように、ここの名物を求めるなら、アーリーバードでなくてはいけません。間違えても思いつきで夕方に付くような愚を犯してはいけません。ジャムやハチミツが目当てなら話は違いますが。
もたもた気の重い仕事でも、取りかかってしまえば、存外テキパキと出来てしまうもの。人生の経験則でもよく知っていることだとしても、取りかかるまでの苦悩、涙ぐましいまでのエクスキューズを打ち倒すのに、信じられない程のエネルギーを消費しちゃう事が本当に多くて、それでいて自己嫌悪に陥る矛盾のなんと不思議なことでしょう。
でもこの日はやや面倒な仕事に、意外に早く取り組み始め、中途半端な一時半に終わらせる事が出来ました。
中途半端に過ぎます。。。しかも日曜日。予定では仕事を早く片付けるか、時間がそれを許さなくなるまで引っ張るか逡巡しながら夕方を迎えてしまうんだろうな。となる予感がしていました。つまり、予期せず余暇の時間が湧いて出たわけです。
しかし、中途半端過ぎます。とにかくどこか行こう。走れば絶対に良いことが待っている。それは間違いありません。不慮の土砂降に見舞われた日も、灼熱の元でもバイク志乃って走ってしまえば純粋に楽しいから。間違いありません。なのに、他に何かを求めてしまう強欲さは何の仕業でしょう、貧乏性でしょうか?
そんなわけで、どこに行くか向かうのかの作戦会議が始まりました。距離、ルート、道中で出会えそうな素敵な場所やものを大検討。目的地が曖昧な時には、決まって都内に向かうのですが、この日は中途半端のおかげで結局、「道の駅・いちごの里吉見」にて、いちごを買い求めようと結論しました。距離もまあ丁度良い。ルートはなるべく大通りを避け、信号のあまり無さそうなトコトコ走れそうな道をナビで調べて、選んで、いざ出発!!
埼玉県あるあるなひたすら真っ平らな道を進むこと一時間半。
少し田舎感の強くなって来た所で、目的地「いちごの里・道の駅よしみ」に到着。
もちろん、端から諦めては居ましたが、やはり実際無いとなると人の欲求は高まるものなるんですかね。猛烈にいちごが欲しくなりました。ちなみに我が家からほど近くに美味しいイチゴ農園があるので、今日今いちごが手に入らなくても全く困る話ではないんです。しかもトップケースの中、一時間半も揺さぶられたら味はともかく姿が無事でいられるとも思えません。そんな冷静な判断さえ狂わせる品切れの恐怖。これは東日本大震災直後の品不足、コロナ禍のマスク品薄事件、曲がりなりにもオイルショック時のトイレットペーパー買い溜めラッシュを経験した身たれば、アナフィラキーにも似た代償作用を催すものです。
しかして手にしたるは、いちごソフト。マスツーの人達が、そこかしこでソフトを啄んでいるのをかねてより、よく目にしていて「いつかは俺もツーリングでソフト」と心に決めていながら、ソロの身で注文する勇気が持てず、いつも自販機の麦茶でごまかしてきました。それも今日で卒業、晴れてソフト組の仲間入りを果たしました。
ストロベリーソフト。普通以上に美味しかったです。だがしかし、やはり日曜夕刻の道の駅は、圧倒的に家族連れのためのもの。おじさんひとり、ソフトにかじりつく姿はあまりに痛々しすぎやしないだろうか。いや、そんな誰も一人のおじさんなどを気にしちゃ居ないことは判っていますが、それでも、もし、もし誰かの目に止まってしまったらと思うと、もう溜まりません。何かに急かされるようにバリバリ音を立てて掻き込んで、ちょっと頭を痛くしながら証拠の隠滅を図るのでした。ふと、一房の葡萄のワンシーンが頭をよぎります。とまぁ、状況をなんとかやり過ごすと、やはりいちごの姿をどこかに求めてしまいます。再度確認するもないものはやはりありませんでした。早春の夕方は、はやくもこの長閑な道の駅をオレンジ色に染め始め、帰郷を促します。いちごをあきらめ、ハチミツとジャムをお土産に帰路につくのでした。これでいいんだと黄昏れながら。